大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和22(オ)31 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

弁護士高木定義上告理由第一点について。

原判決が、上告人と被上告人間における本件保険契約は、昭和一七年一二月三日

午後四時をもつて期間満了により効力を失つた事実を認定するに当り、「真正に成

立したことに争ない乙第一号証の三、四」を証拠として挙示している点を論旨は非

難するのであるが、この乙第一号証の三、四は真正に成立したことに争のない書証

である(記録第五二丁、第一二二丁において上告人は、その成立を明かに認めてい

る)。「原審における上告人本人尋問の際、上告人が捺印のみを認めその他の部分

を否認した書証」は、論旨に掲げる乙第一号証の三、四ではなくして、乙第一号証

の一、乙第二号証の一、三である。これらの書証は、上告人名下の捺印が真正なも

のであることは上告人の是認するところであるから、反証のない限り全部真正に成

立したものと原審が推認して、前記事実認定の証拠としたことは何等差支ないとこ

ろである(民訴第三二六条)。次に論旨の引用する証人Dは、原審において保険加

入申込書には申込人が署名捺印するがそれ以外は代理店の勧誘員が記載するのが慣

例である旨を供述している。その趣旨は、署名捺印以外の部分は勧誘員において申

込人の意思に基かないで勝手に記入する慣例であるというのではなく、単に現実の

記載担当者を述べているに過ぎないと解すべきであろう。また論旨の引用する証人

Eは、第一審においては乙第二号証の一の「E扱」という字句の説明をしているに

止まり、原審においては、乙第二号証の一のような保険申込書中の申込人の署名捺

印は本人がするけれども、他の部分の記載は申込人本人が書くこともあり代理店の

方で書くこともあるというに過ぎない。従つて、これらの証言は乙第一、二号証の

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各一の成立真正に対する反証としなければならぬものではない。その他論旨は、事

実審である原審の自由裁量権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰

着するものであるから上告適法の理由とはならない。

同第二点について。

論旨は「上告人が被上告人会社ニ昭和十八年三月二十六日甲第一号証ニ依リ総計

五百五十四円二十銭ノ支払ヲナシタル」旨を主張し、原審認定のごとく本件保険契

約が昭和一七年一二月三日において失効したとすれば、上告人は何を苦んで昭和一

八年三月二六日に本件保険料を支払うの必要ありやと述べている。しかしながら、

昭和一八年三月二六日に保険料を支払つたという主張は全く新しいもので第一審以

来の主張は昭和一七年三月二六日に支払つたというにあつた。従つて、この新しい

主張に基く論旨の理由なきことは言うをまたない。また論旨の前半における昭和一

八年を昭和一七年の誤記であるとしても、契約上の保険期間と保険料払込による責

任負担期間とは必ずしも常に一致することを要しないから、論旨の支払金円の性質

は将来一箇年分の保険料の前渡金であると断定しなければならぬものではない。論

旨はそれ故理由なきものである。

同第三点について。

論旨は、結局事実審である原審の自由裁量権に属する事実の認定、証拠の取捨判

断を攻撃するに帰着し、上告適法の理由とはならない。

よつて民訴第四〇一条第三九六条第三八四条第九五条第八九条に従い主文のとお

り判決する。

この判決は、裁判官全員の一致した意見である。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 眞 野 毅

裁判官 澤 田 竹 治 郎

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裁判官 齋 藤 悠 輔

裁判官 岩 松 三 郎

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